[Data]
ハード:Segasaturn
メーカー:セガ
発売日:1995.05.26
ジャンル:スポーツ・野球
実勢価格:10~50円(中古価格)

評価:★★★☆

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[Review] 2012.01.23

完全中継プロ野球 グレイテストナイン

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 セガサターンで初のプロ野球ゲームであり、セガの代表的野球ゲームシリーズともなった「グレイテストナイン」シリーズの記念すべき第1作。しかし、メガドライブの「超球界ミラクルナイン」よりもこちらのほうが発売が先だったとは思わなかった。

 ファミコンのベースボールから始まった野球ゲームというジャンルにおいて、投球・打撃画面はメーカーのアイデアが詰まっていたと言える。ファミスタで有名になって他メーカーがこぞって採用した擬似捕手視点や、燃えプロのようなTV中継視点・そしてパワプロのような完全捕手視点などさまざまな視点のゲームが登場したのだが、守備画面については、ほぼ固定視点で変化もほとんどなかった。
 もちろん、これは「この視点が一番見やすくプレイしやすかったから」に他ならない。事実、一時期燃えプロシリーズはこの守備視点を思い切って変更したことがあったが、斜めにしても(燃えプロ'88など)、上下を逆にしても(燃えプロ'90など)評価は低かった。

 何でこんな話になったかというと、今作はプロ野球ゲームとしては史上初(自分の調査した限りおそらく)の「球場をフルポリゴンで表現した」作品であるからだ。このポリゴンで表現された球場により、打球によってボールの軌道を追うカメラワークであったり、飛んだ打球方向によって見やすいように動く守備視点という、今や当たり前の要素が追加された形となる。
 ちなみに投球・打撃画面&守備画面の選手グラフィックはポリゴンではなく実写取り込みの2D描画となっており、かなり滑らかな動きと合わせて、サターンだからこそ出来たのではないかと思えるほどの力技。フォームはイチローが振り子打法っぽい感じな以外はそれほど似ていない。単純にパターンが少ないのかな?

 バーチャファイターをすでに作っていた当時のセガの技術力からすれば、選手を含めたフルポリゴンというのもこの当時に出来たかもしれないが、フルポリゴンスポーツゲームの難しさがこの当時は顕著に現れており、今作に関して言えばフルポリゴンじゃなくて良かったというところだろう。

 全体的な基本システムはファミスタ式のオーソドックスなもので、違うのはせいぜい投球時に方向キー+投球で変化球が決まるくらい(その後微調整はきく)。L/Rでマウンド上の投手を左右に動かせるというのもよく見る。
 打撃もタイミングを合わせて左右に打ち分けるだけの簡単操作。こういうリアル系野球ゲームは特に、打撃の際のミートポイントが難解だったりボールスピードがおかしかったりするのだが、このあたりのバランスは非常にうまかった。ミートポイントが広めな上、左右の打ち分けもさほど難しくなく感覚で行ける。ボールスピードと合わせて、非常にバランスの取れた仕様となっているのはさすがと言える。

 守備については、内野ゴロやフライに関しては悪くないが、左中間/右中間を完璧に破るような当たりを打っても2塁で悠々アウトになってしまうシーンが散見されるなど、外野手の肩の強さとランナーの走力がうまく合致していないのが惜しい。野手の動きは良く、ボールトスや送球フォームなど、滑らかな動きでパターンも多め。
 守備アングルは「LOW/MIDDLE/HIGH/ランダム/CHASE」と5種類から選択可能。他ゲームでもそうだったが、LOW視点は視野が狭すぎて自分の守備の際に使える視点ではなく、リプレイでこの視点が出るならわかるがプレイ視点として登場する意味がわからない。基本はMIDDLEかHIGHでいい。CHASEはボールを追いかける視点だが、こちらも追いかけるカメラがボールに近すぎてリプレイ用視点といった感じ。

 ゲームモードはオープン戦・ペナントレース・トーナメント・オールスター・ホームランコンテストなど一通り揃えてある。チームエディットもあるが、オリジナルチーム「エンジェルス」「ナイツ」2チームの名前と能力がエディットできるだけなので、実在チームに関してはエディット不可。ここは実在チームのトレードやエディットが出来ると良かったかもしれないが。1994年の成績を登場選手全員分参照できる「データベース」モードも。燃えプロ'95あたりと発想が同じなのが気にならなくはない。

 「完全中継プロ野球」というタイトルからもわかるかもしれないが、このゲームのひとつのウリは”世界の松下”で有名?だった元TBSアナウンサー松下賢次氏が担当する実況。時期を考えるとパターンはそこそこ多いのだが、いかんせんぶつ切り実況なのが痛い。松下氏らしいテンション高めの実況はある程度堪能できるとは思うが。
 ゲーム中のオプションでは、この実況を「応援声援モード」に変えることが出来る。しかも地域を東京・関西・名古屋・広島・博多の5つ(方言)から選べるというよくわからないこだわりぶり。さらに特筆すべきはその声を当てている声優で、檜山修之・石田彰・うえだゆうじ・小野坂昌也と今やトップクラス揃いの豪華面子。セガっぽいよなあこういういらないこだわり…

 そのほか気になった点としては、選手登場時の成績が英語中心表記で見難かったところか。打者は打率・本塁打・打点くらいだが投手は成績のほかに投法なども表記してあり、しかも情報量が多いのにすぐ消えてしまう。そもそも投法表記っていらなかったのでは…

 結論としては、惜しいところはあるものの、野球ゲームとしては最低限バランスを保った作品であること、力技とポリゴンを合わせたグラフィックは95年当時で考えればかなり上質でキーレスポンスも良いなど、評価ポイントが非常に多く、プレイしやすく丁寧なゲームという印象。この内容を新ハードの野球ゲーム第1作として出せるのはさすがセガ。