[Data]
ハード:Segasaturn
メーカー:アスキー/システムサコム
発売日:1996.07.26
ジャンル:アドベンチャー
実勢価格:200~300円(中古価格)

評価:

[Review] 2017.06.24

時空探偵DD~幻のローレライ~

●あらすじ
 西暦2238年。時空犯罪を専門に扱う時空探偵「DD」こと鳴神雷蔵のもとに、ある日一人の少女が仕事の依頼に訪れた。彼女レニ・ラヴァルの依頼とは、失踪した父、高名な超電磁工学の権威であるクルト・ラヴァル博士の行方を探すことであった。
 父の残したオルゴールの中から出てきたディスクを解析すると、1939年の北極に非合法な謎の大型機械をタイムワープさせたという記録が残っていたことから、鳴神らは300年前・1939年の過去へと向かうこととする。
 1939年・ドイツの酒場で「ローレライ号」と呼ばれる大型飛行船の処女航海が行われること・その開発者としてクルト・ラヴァルと思われる人物の写真が載っている新聞を発見した一行は、新聞記者と偽ってローレライ号に乗船することとなった…

●概要
 クルト・ラヴァルはなぜ過去の世界に存在しているのか?謎の大型機械は何か?そして過去に向かったDD達を覆う謎の影、彼らはいったい何者なのか?ローレライ号を探索しながら様々な謎を解き明かしていくアドベンチャーゲーム。グラフィックはすべてCGで、登場キャラクターの会話はすべて音声付き。イベントもCGムービーのみで展開され、その量は1時間を超える。
 声優も森川智之さん・横山智佐さん・平松晶子さん・根谷美智子さん・西村知道さん・石塚運昇さん・林原めぐみさん・丹下桜さん・大塚芳忠さん・大友龍三郎さん・藤本譲さん・金尾哲夫さんと超豪華面子である。ちなみに登場人物はこの声優の数とイコールで、非常に少ない。

 PS版・Windows95版と同時発売されたマルチプラットフォームのソフトで、発売はアスキー・開発はSFC「ジェリーボーイ」・SS「ゲイルレーサー」・PS「アストロノーカ」などの制作を手掛けたシステムサコム。

●フルCGムービーからの驚きのスタート
 スタートからCGムービーが始まる。当時のCGムービーはまだまだこなれておらず、1996年の時点で人物まで違和感なくムービーに仕立て上げていたのはスクウェアかナムコ・セガくらいだったと思うが、今作は残念ながら動きの違和感やキャラの硬さがどうしても出てしまっており、時期を考えても高い水準とは言い難い。それでも、ここまですべてをCGムービーで描き切るというのはかなりの労力だったはずで、よく作り上げたなと思う。

 オープニングでレニの依頼~ローレライ号乗船まで約30分ほどのムービーが進行するのだが、それが終わるといきなりDISC1が終了してDISC2への入れ替えを求められる。DISC1の時点ではコントローラを動かすことすらなく、プレイヤー操作を待たずに次のディスクに進む作品は今まで聞いたことがない。斬新と言えば斬新だ。
 ちなみに、ストーリーが進むと最後はまたDISC1に戻ってくる。これもなぜ?

●操作パート
 まず、主人公の鳴神雷蔵には「特殊能力」というのがある。雷蔵は別名「DD」と呼ばれているが、これは「Dracula Detective」の略で、吸血鬼の遺伝子を持った特殊能力者。能力は「空間の記憶を見ることができる」、該当場所の過去を見ることができるというものだ。
 特殊能力を使うにはパワーが必要で、パワーを貯めるには①トマトかドリンクを摂取する ②誰かの血を吸う のどちらかが必要。ゲーム中の説明では、パワーをMAXまで上げると腕力もアップする、となっている。

 操作パートでは、ローレライ号の客室デッキ・乗務員室デッキを移動しながら情報を収集しつつストーリーを進行させていく。すべての人物に話を聞いて、行けるところすべてに行って…という、アドベンチャーの基本的なスタイルを踏襲しているので、それほど行動に悩むことはない。

●設定がほとんど生かされない特殊能力
 雷蔵の特殊能力については先に述べた通りだが、これだけ便利な能力でしかもメニューから使用するかを選択できるので積極活用するのかと思いきや、使う場所は完全固定でしかもわずか2回しかない。しかもそのうち1回は過去を見るわけでも何でもなくドアの向こうを透視するのに使っている。「確かシャワールームから物音がしていたな!」と言っているのだから、特殊能力など使わずドア蹴破れば良かったのでは。
 これも先述したが、特殊能力使用のためにはパワーを貯める必要がある。パワー不足を解消するために、雷蔵が助手の霧姫に対し吸血の許可を得るというイベントが入り、その後誰かの血をもらいに行くというのが通常の流れになるのだが、ゲーム内で手に入るトマトとドリンクのフラグ管理が適当で、なぜか特殊能力利用の手前で無限に入手できるようになっている。そのため、トマトとドリンクのみでパワーを最大まで貯めて先へ進むことが出来、肝心の吸血イベントを吹っ飛ばせてしまう。
 もっと言うと「特別な場合」として許可制になっているほどの吸血を助手のOKだけで済ませてしまうというのもよくわからないけど。
 「MAXパワー時は腕力が上がる」という設定も、パワーを一定まで上げていないと進めないシーンはあるがMAXまで上げておく必要はなく、説明と内容が全くかみ合っていない。

 特殊能力と言えば、雷蔵とは別に、ゲーム開始当初に少しだけ触れられているレニの特殊能力が後半になっていきなり発動するシーンがある。君なぜそれをもっと早く使わなかったの…?という。

●あまり意味のない登場人物たち
 船内に集まった登場人物たち、みんな何かを隠し持っていそうな感を漂わせてスタートするが、結果大半の人物が全く関与しない単なる脇役である。特に、最初から雷蔵の正体を見破った感を出すなど情報通らしいところを見せていた美女マリアについてはその後それらしいセリフが一切ないまま全て投げっぱなしで終了。
 客室乗務員のエルヴィンに関してもいろいろ裏事情があるっぽい描写はあるのだが、こちらも結果生かされる場面はない。

●あまり意味のないアイテムたち
 超重要アイテムらしく手に入れることとなる「客員名簿」は単なる雷蔵用メモなだけで、そもそもこの登場人物数で名簿が必要だったのかすら怪しい。船内のマップも手に入るが行動範囲が単純すぎてマップなど必要ない。
 また、セーブしたり助手の霧姫とやり取りするのにテレビ電話らしき「ヴィジフォン」というアイテムを使うのだが、再序盤に霧姫が直々に「Xボタンでメニューを開いてね」「Aボタンで決定してね」と、完全世界観無視の操作説明をしてくれる。それ言わせる必要あったかな…?

●あまり意味のないギミック
 レールガンを撃つというイベントの中で弾をカートリッジに装填するという操作があるが、なぜか装填場所が10ヶ所あり、うち3ヶ所があたり、残りがはずれという謎のギミックが仕掛けられている。外れても特にペナルティがあるわけでもなく、「そこは違う、入れなおしてくれ」と言われるだけ。佳境にきてのこの謎ギミックには?がつく。

●探偵らしいことはほとんどしていない
 「過去を見られる」という特殊能力自体が凶悪すぎてこの能力だけで犯人を見つけられてしまうので、らしい部分は序盤の情報集めくらい。「次はここへ行こう」「こうしよう」というセリフが頻繁に入ってくるのでプレイヤーに考えさせるような余地もほとんどなく、言われたとおりに淡々と進んでいれば大丈夫。探偵とつくからには推理要素もあるだろうと思っているとえらい目に合う。

●総評
 総プレイ時間はおそらく2~3時間程度、とにかくいろんなものが投げっぱなし。グラフィックも決して褒められたものではないが、それ以上にゲーム自体の中身がやばすぎる。CGムービーと豪華声優陣招聘で力尽きたとしか思えない。声優陣の演技は素晴らしいので、ここは評価できるポイント。
 セーブするときに「S○○」という数字が入る。おそらくシーンのことと思われるが、途中まで48とかだったものがエンディング手前にいきなり99に跳ね上がるところを見ると、本当はもっといろいろ追加する予定だったんじゃないかな?とか。

 余談。Xで開くメニューの中に「ヒント」という項目があるのだが、どの場面で押しても反応せず、結局どこで使うものなのか最後まで分からないまま終わってしまった。これまた入れたはいいけど使えなかったのか、それともゲーム中に使う場面があったのか…