[Data]
ハード:Playstation Vita
メーカー:スクウェア・エニックス/メディアビジョン
発売日:2015.05.07(単品配信開始日)
ジャンル:RPG
実勢価格:800円(ダウンロード販売のみ)

評価:★★★★

ケイオスリングス

●あらすじ
 腕利きの殺し屋、東方の国の姫君、巨大な斧を携えた大柄の戦士、褐色の肌の女戦士。

 「代弁者」と名乗る謎の存在によって世界中から5組の男女が集められ、生き残りをかけて戦うトーナメント「アルカ・アレーナ」の開催が宣言される。

 戦いに拒否権はなく、逆らえば死。
 それぞれのペアは、ここが何処なのか、なぜ戦うのかも知らされぬまま、命を賭けた戦いに巻き込まれて行く。

 勝利者には「不老不死」が与えられるというのだが…

●概要
 2010年、iOS用の完全新作RPGとして発売され世界中でヒットを飛ばした作品をPS Vitaに移植したもの。Vita移植に当たっては、タッチスクリーンによる操作に加えてスティックやボタンによる操作も可能になるなどしている。2017年7月現在、スマートフォン向けの配信は終了しており、PS Vita版のみ入手可能。
 4組の男女ペアを1組づつ進めていくという形式で、ゲーム開始当初はエッシャー・ミューシャ/シャモ・イルカの2ペアからスタートし、2組をエンディングまで進めるとオーガ・ヴァティー/アユタ・マナの2ペアが新たに加わる。それぞれのストーリー進行具合はタイトル画面の「Scenario」から確認することができるようになっている。

 制作はワールドアームズシリーズなどでおなじみのメディアビジョン。シナリオは「428~封鎖された渋谷で~」や「閃乱カグラ」シリーズのシナリオも手掛ける北島行徳氏。音楽はワイルドアームズ一部作品の作曲などを手掛けている上松範康氏。

●ストーリー
 4組の男女がそれぞれ闘技を勝ち残っていくという展開のため、言い方は悪いが「同じような流れを4回繰り返す」というのが基本の仕組み。それぞれ集められた理由もわからないところからその理由が見えていくところ、アルカ・アレーナに呼び出された本当の理由が後半になって明かされてゆく様は非常にテンポ良く進み、ワイルドアームズを彷彿とさせる熱い展開も目白押し。
 登場人物がそもそも5組の男女(1ペア早々に退場するが)+α程度と少なく、舞台も初めからアルカ・アレーナの中だけと狭いことがわかりきっているので、あまり深く考えなくても良いというあたりがいい方向に働いているか。
 ペアごとにレベルはもちろんリセットされるが、手に入れたお金や後述のジーンはリセットされずにそのまま引き継がれるようになっているので、最初のペアのみ若干苦労するが2ペア以降はかなり楽に進めることが可能だ。いろんな仕様を理解できてくる2ペア目以降のサクサク進行がこのゲームの良さかと思うので、1ペア目で飽きなければその後は気付いたら4ペアクリアになっているだろう。

●基本システムなど
 フィールドはすべて2DCG・キャラクターは3Dポリゴンで描かれる、初代PSのスクウェア作品によくあったパターン。FF7~9とかパライヴとか。PS時代の各作品はどこがマップの切り替え場所なのかわからないということが散見されていたが、今作の場合一本道がほとんどで1つのマップが狭いため、同じようなことにはなっていない。

 システムについてもほぼオーソドックスなスクウェアRPGというところだが、ダンジョン突入時にモンスターのレベル選択が出来るのがオリジナルな部分だろうか。最初はLV1~10・11~20の2つから選べるが、ストーリーを進めていくにつれてLV91~100まで増えていく。レベルが上がると当然敵は強くなるがもらえる経験値・お金は増えるし、道中にある宝箱の中身も良くなっていく。
 基本的に自分のレベル+10くらいの選択でも問題なく進めてしまうので、そのあたりを意識すると短時間での進行が可能になるだろう。ちょっと無理してサクサクレベル上げを進めることもできるし、逆にコツコツ進めることも出来るというのがなかなか面白い要素だ。

●そのほか戦闘/ジーン・属性
 モンスターを倒すことで入手でき、同じ系統のモンスターを倒すことで特殊能力を増やすことが出来る「ジーン」があり、2名のキャラそれぞれ最大3つのジーンを装備させて戦いに臨むことが出来る。基本は進行通りに敵を倒していれば成長していくので気に留める必要はなく、回復・攻撃・補助のどれを優先していくかによっていろいろなジーン装備のパターンを作ることが出来る。
 おそらくいろいろ付け替えて臨むことを前提としていたんだろうなあとは思うのだが、レベルアップによってすべて打ち消されてしまう感があり、何とももったいない。

 属性については、今作では火・風・水の3属性が3すくみで成り立つ構図。自分が魔法を使うとその属性に切り替わるのがなかなか珍しい。アタッチという魔法で敵味方任意に属性を付加させることも出来、わざと敵に属性を付加させて弱点属性で狙い撃ちするなどの戦いが可能。この仕様を理解しているかどうかで難易度がガラッと変わる。

●サクサク進めるテンポの良さが○
 ストーリー・戦闘部分でも書いた通りだが、ストーリー進行もレベル上げも、とにかく非常にテンポ良く進む。もちろんもともとスマホ向けゲームであるため、短時間でも進められるように作ったという前提はあるだろうが、移動距離自体が少なくどんどん話が進む・どこでもセーブが出来る・あっという間にレベルが上がるなど、とにかくストレスの少ない進行具合。
 レベル上げについては戦闘のところでも書いた通り「ちょっと上のレベルで戦うほうが良い」という仕様を生かすと、2~3回の戦闘でレベルが1上がるくらいの勢いで進めることが出来るので、レベル上げもさほど苦にならず。レベルをある程度上げておかないと苦しい敵も一部存在はするものの、敵と同じくらいのレベルまで上げておけばいい(敵のレベルも表記される)ので目安としてわかりやすい。このあたりも目指すところがはっきりするので非常にいい要素だと思う。

●素材の少なさ
 スマホ向けということで家庭用ゲームほど容量をふんだんに使えるわけではなかったということだろうけど、同じ素材の使いまわしが非常に多い作品になっている。ストーリー上でも4ペアすべて同じダンジョンを攻略することになるし、ダンジョン内部もところどころ左右反転しただけの場所や全く同じ構成のマップが複数存在。
 モンスターも20種類ほどを色違いで使い回しており、一部重要ボス以外はボスもザコ敵と同じグラフィックの色違い。このあたりはFF10を思い出す。
 そんな中ではあるが、基本のイベント部分がほぼフルボイスというあたりは相当頑張ったと言えるのではないだろうか。声優陣も諏訪部順一・井上麻里奈・大原さやか・石塚運昇・岡本信彦・花澤香菜(敬称略)とかなり豪華な面子を揃えた。

●レベルを上げて物理で殴ればいい
 KOTY受賞「ラストリベリオン」でおなじみの戦法として有名?だが、今作でもレベルが上がれば上がるほど物理攻撃の強さが際立つようになり、レベル50後半あたりまで上げるとLV91~100の敵まで物理攻撃だけで殲滅できるようになる。
 序盤~中盤にかけては先に書いた属性付与を使って弱点属性をつく戦いがメインになってくるが、結果レベル上げですべてカバーできてしまう。それほどレベルアップによる能力上昇が大きいゲームということだが、じっくり進めた結果やたら歯ごたえのないゲームだなーとなってしまう可能性もある。

●総評
 「スマホ向けとしては」という話にはなってしまうが、800円という価格から考えれば相当出来の良い作品であり、少ない素材をどう生かすかを本当に考えて形にしたんだろうなということが良くわかる。そこまで難しくないので、ぜひ16個すべてのトロフィー獲得を目指してもらいたい。

 Vita TVでのプレイだったが、唯一タッチスクリーンプレイを前提としているパズル部分の操作に難があったのが残念。出来ればVita本体でのプレイを推奨したい。