[Data]
ハード:Playstation Vita
メーカー:角川ゲームス/エクスペリエンス
発売日:2013.11.14
ジャンル:3DダンジョンRPG
実勢価格:350~500円(中古価格)

評価:★★★★

[Review] 2019.10.06

デモンゲイズ

●プロローグ
 遥か西方 呪われた地———ミスリッド
 迷宮深くに残された財宝 青年は生きるためにハンターとなる
 失われた記憶と携えた魔眼の力
 いつか己の謎が解き明かされるその日を信じて

 『迷宮に潜むデモンを捕獲せよ』
 魔眼で捕らえれば強力な味方となる 共に戦うことで更なる力が…!!
 すべてのデモンを捕獲した時、新たな道が開かれる…

 『前人未到の地へと挑め』
 行く手には魔城グリモダールが待ち構える!
 今-デモンゲイザーが物語を刻む

●概要
 ウィザードリィ エクスシリーズなどを手掛け、3DダンジョンRPGの製作に強みを持つ制作部門「チームムラマサ」を持つエクスペリエンス社が開発、角川ゲームスと共に立ち上げた「DRPG PROGRESS」プロジェクトの第2弾。ダンジョンRPGの難しいところをわかりやすくし、ユーザーを広めていく目的でスタートしたプロジェクトとのこと。
 基本部分は従来からあるダンジョンRPGのシステムを継続していて、レベルアップで任意に振り分けるパラメータアップやオートマッピング・

●ストーリー
 地下牢獄で目を覚まし、デモンと呼ばれる半機械生命体に襲われた主人公。賞金稼ぎの女性ローナの手助けもあってデモンを撃退し魂を捕らえた。主人公はデモンの魂を瞳に封じ込める「デモンゲイズ(魔眼)」の持ち主だったが、自分がなぜこの力を使えるのかを全く覚えていなかった。ローナはそんな主人公に宿屋「竜姫亭」で賞金稼ぎとして働くことを提案。主人公もそれを受け入れ、各地のデモンを退治しながら自分の記憶を探っていくこととなる。

 ストーリーの根幹は『「めぞん一刻」や「ラブひな」など、主人公とその仲間たちが下宿でドタバタと共同生活をする、そんな世界をゲームに落とし込みたい。それがデモンゲイズの出発点となったコンセプトです』(→まんたんWeb)との話の通り、竜姫亭の主人フランとのやり取りを中心に、いわゆるラブコメチックな流れが大枠を占める。
 そんな中でも後半になるとかなりシリアスな内容にシフトしてくるが、結局いろいろあったけど何とかなったみたいなストーリーなので、途中途中の話はそこまで意味をなさないというか。気付いたら主人公とフランが恋仲になっていてちょっと置いてけぼり感があるというか。絵柄含めてちょっと萌え系に寄りすぎた感もあり、パッケージのイラストで飛びつこうかどうか悩んだ方もいるのではないかと。

 ストーリーの根幹に「賞金稼ぎとして働き、竜姫亭に家賃を入れる」という設定があるため、毎度竜姫亭の外に出てから中に戻るとパーティレベルに応じた家賃を請求される。結局中盤以降になると持ち金に困ることがそこまでなくなるので、結果無意味な要素になるのが残念。
 外に出た段階で家賃請求の対象になるらしく、ダンジョンに行ったかどうかの判別ではないのも少々理不尽。いったん外に出て、忘れ物したので戻る→家賃請求なんてことも平気で発生する。ストーリーの中で「フランは守銭奴」というキャラ付けがされているので、まあ納得できないこともないけど…

●デモンの召喚
 魂を捕らえたデモンは最大3体までダンジョンに連れていくことが出来、戦闘中は「オープンデモン」で呼び出して共に戦わせることが出来る。連れている間は”パッシブスキル”と呼ばれる常駐スキルが発動し、隠し通路の発見・アイテムドロップ率アップ・最大HPアップ・攻撃力上昇・被ダメージ減少などの効果を得られる。
 最終的に11体のデモンの中から3体を選ぶことになるが、数が多すぎて結果使いやすいものは絞られるように感じられる。具体的には、探索用途で隠し通路発見を持つコメット・対ボス戦用に高い攻撃力+物理攻撃力上昇スキルを持つマルス・最大HPが高く盾として最終まで使える&ダメージ床回避が有能なクロノス・自動回復スキルを持つネプトゥヌスの4体。それ以外は正直言って好みの問題、というか縛りプレイ以外では使う必要がそれほどないように思う。

●サークルシステム
 デモンゲイズの特徴的なシステムで、ダンジョンの各地に点在する「トレジャーハンティングサークル」に専用の「ジェム」を使用して戦闘に勝利することで、任意の種類の武器防具が手に入るというもの。例えば「剣のジェム」を入れて戦闘に勝てば剣系の武器が手に入り、盾のジェムを入れれば盾系の防具が手に入る、といった感じ。
 1回に3つまで(クリア後4つまで増やせる)のジェムを投入でき、入れたジェム分の武器防具が手に入る。後述の武器防具強化要素にもマッチし、アイテム収集もしやすいとかなり良いシステムだ。

●武器防具強化要素「エーテル」
 今作では、武器防具は10段階(+10)まで・一つしか手に入らないユニークアイテムは30段階(+30)までの強化が出来るようになっているが、その強化のために必要なのが武器防具に秘められた魔力「エーテル」と呼ばれるもので、武器防具を地下室にある「エーテル圧搾機」で抽出することで数値を貯め、貯めたエーテルで強化を行う。
 エーテルも武器防具の種類ごとに分かれていて、剣を強化したい場合剣のエーテルが必要で、剣のエーテルは剣系の武器を抽出することで手に入る。

 まず、従来この手のゲームで武器を強化しようと思うと、だいたい元の武器+複数の素材が必要なことが多く、そもそもの素材の数が多かったり、素材に上位下位があって、上位素材は下位の素材を複数集めてから上位に変えて…みたいなものも必要だったり、アイテム管理が大変だったりとかなりややこしいシステムだった。
 それが今作では素材と呼ばれるものを一切排してポイント化でひとまとめにしたことで、とても分かりやすいシステムになった。さらに前述のハンティングサークルにより欲しい種類の武器防具を任意で手に入れることが出来るので、強化も道筋をつけやすい。サークルシステムと合わせて、ここはライトユーザーに向けたシステム作りが非常にうまく作用している。

●ユーザーフレンドリー要素
 戦闘は○ or △で超高速の早送りができ、早送りしすぎて見えないためバックログまで搭載。ザコ敵相手には戦闘にかける時間を相当短くすることが可能だ。
 ダンジョン内で一度踏破した場所であればマップ表示から任意の場所まで自動で移動してくれる「オートパイロット」機能も搭載され、武器防具集めのためのサークル巡りがやりやすいシステムになっている。

●なかなかシビアな難易度
 システムがわかりやすくなったとは言えさすがはダンジョンRPG、ゲーム全体の難易度はそこそこ高めに設定されている。難易度を4段階に設定でき、地下室でいつでも変えられるようになっているが、ノーマルに当たる「あったかい」でも苦労するボスは相当苦労すると言っていい。
 特に中盤から後半にかけての固定エンカウント(ボス戦など)は何も考えずに挑むとあっさり全滅させられるレベルで、苦労したのはグリモダール城突入直前に当たるアスタロト・イーシルの御鏡の結界で登場するイーシルミラージュ・あとラスボスあたり。
 自動回復5,000強(難易度あったかいの場合。最難のまるこげにすると8,000強になる)という驚愕の回復性能を持つイーシルミラージュと取り巻き次第で全く戦局が変わるラスボスはかなりリトライを繰り返す羽目になった。この手のRPGに慣れてないプレイヤーだと完全に心を折られるのではないかな…

●総評
 育成関連のシステムがわかりやすかった半面、難度は結局従来のダンジョンRPGじゃんっていう感じなんで、当初の目的であっただろう「ライトユーザーの取り込み」という部分から見ると、決して成功とは言えない作品のように見える。
 ただし数あるダンジョンRPGの中で、特にアイテム管理や育成のとっつきやすさはピカイチで丁寧な作り。そのあたりが難しい・かったるいなどの感想を持っているプレイヤーには一度プレイしてみてほしいなとは思う。

 個別項目を作るほどではなかったところだと、主要キャラはほぼ声がついているが収録環境のせいか割れたり音質が悪かったりでクオリティの低さが目に付くところとか、キャラCGも普段の立ちイラストが一番まともだったり、細かく気になるところはいっぱいあった。
 音楽はボーカロイド「IA」を使用しており、架空言語による歌が各種BGMで使われている。ここは正直好みの問題だろうが、曲によって合う合わないは多少あった。