[Data]
ハード:Playstation Vita
メーカー:日本一ソフトウェア
発売日:2015.10.29
ジャンル:夜道探索アクション
実勢価格:3,500~4,500円(中古価格)

評価:★★★

[Review] 2018.06.21

夜廻

●ものがたり
 幼い少女は、飼い犬と散歩していました。
 しかし、彼女の不注意によって犬は事故に合い、どこかへいなくなってしまいます。
 からっぽのリードを引いて帰ってきた彼女を見た姉は、犬を探しに外へ飛び出していきました。
 ひとり残された少女も遅れて家を出ますが、そこに広がっていたのは、見知った昼間と全く異なる不気味な夜の街でした…

●概要
 事故にあってしまった愛犬のポロ・そしてポロを探しにいなくなってしまった姉を探すため、たくさんのお化けが徘徊する不気味な夜の街を探索するクォータービューのアクションゲーム。開発・発売は日本一ソフトウェア。予定売り上げを大幅に超えてヒットとなり、続編「深夜廻」も発売された。

●基本操作
 十字キーor左スティックでの移動とR1でのダッシュ・L1の平行移動で進めていく。△は使用アイテムの選択・□で使用。使用アイテムには、お化けの気をそらすために使用する「石」などがある。難しい操作はなく、非常に覚えやすい。
 プレイヤーの少女にはスタミナがあり、R1でのダッシュを行うことで減少し、一定値以下になると疲れてダッシュスピードが減少する。

 町中にいるお化けは、そのほとんどが懐中電灯などの光が当たっているときのみ見える。少女は最初から懐中電灯を持ってスタートし、懐中電灯を照らすことで目の前のお化けを確認しながら進むといった形だ。
 少女は攻撃することはできず、お化けに対峙したときは近くの隠れられるオブジェクト(茂みや看板など)に隠れるか、R1でのダッシュで遠くに逃げることしかできない。お化けに接触するとゲームオーバー・いわゆる一撃死で、セーブポイントとなっている各地のお地蔵さんや自分の家に戻される。ペナルティは特にないので、基本死んで覚えるという形。ペナルティどころか、ゲームオーバーを繰り返すことで解放されるトロフィーがあるくらいだ。

●こだわりの町の雰囲気
 もっともこだわったであろう部分だが、これは確かにすごい。イメージは完全に昭和の田舎町といったところで、住宅街に学校・寂れた商店街に郊外の山や畑・池などで構成されているのだが、電気のブーン…という音やジジジ…という音が聞こえる街灯や自動販売機、ショッピングセンターが出来ることに伴い立ち退き要求が出ているほどシャッターの降りた状態の商店街。
 ゲーム中は音楽もなく環境音のみだが、町の中では虫の音や電気の音が、郊外に行くと風の音が流れるなどの空気感も見事。色使いから音に至るまで、かなりこだわったんだろうなと思わせる素晴らしい仕事ぶりだと思う。

●心臓音システム
 お化けが近くに来ると少女の心拍数が上がり、心音が鳴り響くシステム。お化けが至近距離に来るほど心拍数が上がり、心音の間隔が短くなる。心拍数が上がるとダッシュ時のスタミナ減少が大きくなり、長い距離を走ることが出来なくなる。
 緊迫感を心音で表すというこのシステムはかなり昔からあるものだが、特にひんやりとした空気感の和風スタイルのゲームにはよく合うなあと。前にこのシステムを見たのがPSの「天誅」だったということもあるんだが…

●かなり高めの難易度
 難易度はかなり高め。特に後半は一撃死前提のゲームバランスによるシビアなアクションが要求され、「近くで再開できるようにセーブポイント用意しておいたから頑張れ」と言わんばかりの場面がいくつか。上記の心臓音システムによるスタミナ減少もある中、
もう少しアイテムの活用やルートを考えながら…という頭を使ったタイプを想像していたんだが、想像以上にアクションに振った作りだった。

●反応が良すぎる各種システム
 アイテムや各種オブジェクトなど、○ボタンで調べることのできるものに近づくと「?」マークが頭上に出現するのだが、アイテムもオブジェクトも隠れるオブジェクトも一緒くたに?マークで示されるため、ちょっと不親切。
 上記の心臓音システムについても、明らかに近くにお化けが見えないのに心拍数が上昇することが多々あり、スタミナの減少だけがむやみに増えて鬱陶しいところもあった。

●ボリュームはそれほどでも
 定価5,000円越えのフルプライスゲームということで考えると、クリアまでの時間がおおよそ5~6時間というのは明らかに短い。これでも50回くらいはゲームオーバーになっているので、おそらくもっと上手い人なら4時間程度でも行けるのではないだろうか。クリア後も2周目ではなくアイテム収集要素のみなので、おそらくみっちり楽しんでも20時間を超えるかどうか。欲張り仕様にしたがる(と個人的に思っている)日本一作品にしては珍しいかな?
 トロフィーの中には「50時間プレイ」で解放されるものがあるのだが、今作の作りで50時間プレイするというのはなかなか辛いものがある。

●総評
 見た目とボリュームの面でどうしてもインディーズ感を抜け出すことが出来なかった感はあるが、他の作品ではなかなか出せていない独特の雰囲気をしっかりと出すことに成功しており、まずはこのグラフィックで十分に楽しめる。
 アクション部分については、もう少し広いマップやアイテムを生かす作りになっていればなあと。単なるアクションの腕を要求されるだけの避けゲーになってしまった印象。