[Data]
ハード:Playstation 4/Playstation Vita
メーカー:日本ファルコム
発売日:2012.09.27
ジャンル:横スクロールアクション
販売価格:500円(ダウンロード専売)

評価:★★★★

[Review] 2020.03.08

イース セルセタの樹海

●プロローグ
 ゴールドラッシュに沸くロムン辺境の街キャスナン―――
 赤毛の青年が、鉱員や人足が行き交う中を彷徨っていた。その肩が荒くれ者の鉱員にぶつかり、因縁をつけられて、したたかに殴りつけられる。

 「ここは一体どこなんだ?……僕は……誰だ?」
 青年がつぶやいた、その直後のことだった。

  「おい、アドル、アドルじゃないか!」
  不意に声をかけてきたのは銀髪で偉丈夫と言ってもいい体躯の持ち主だった。もちろん青年には見覚えがない。
  風貌のわりに馴れ馴れしく、妙に軽薄な男は情報屋のデュレンと名乗った。デュレンによると、どうやら自分の名前はアドル・クリスティンというらしい。
 数週間前にこの街でデュレンと出会ったアドルは地元の人間もめったに踏み込むことのない≪セルセタの樹海≫へと旅立ち、その後消息不明になっていたというのだ。
 魔の領域と呼ばれる≪セルセタの樹海≫で一体自分に何が起こったのか?何故自分は一切の記憶を失くしてしまったのか?
 真相を確かめるため、アドルはデュレンとともに禁断の地≪セルセタの樹海≫に再び挑む決意をするのだった―――。

●概要
 1993年に発売された、日本ファルコムのアクションRPG「イース」シリーズの第4弾「イースIV」を日本ファルコムの自社開発でリメイクした作品。イースIVはほぼ同時期に発売されたSFC版とPCエンジン版で開発会社が異なる上、ストーリーもそれぞれ大きく異なるという謎の展開となっており、どっちを正史として続編を作るかにおいてもしばらく定まらなかったりしていた。
 今回がイースIV初の自社開発となり、従来のイースIVのストーリーとは大きく変わる内容となっている。今作のアドルは記憶を失ったところからスタートするが、そもそもイースIVにはアドルの記憶喪失設定自体なかったので、かなり大胆に変更を加えたことになる。

●爽快感あるアクション
 基本操作はPSPの前作「イースVII」に準じており、○ボタンの連続攻撃と×ボタンのダッシュ(回避)・△ボタンのガードを主体としたスピード感のある動きが特徴。攻撃も回避も、とにかくサクサクと快適に動かせる。良く言えば前作のいいところをそのまま生かした形、悪く言えば大きく変わらなかったとも言えるが、下手にジャンプやら何やらを加えて面倒な操作を追加するくらいならこの形のほうがいいのかもしれない。

●激しいキャラ格差
 イースVIIと同様、今回もプレイヤーキャラにはそれぞれ「斬」「打」「突」の3種類の武器属性がある。モンスターも大半が3属性のどれかが弱点となっているため、3人パーティでどの属性のキャラを入れるかが道中重要となってくるのだが、キャラの優劣が相当はっきり分かれていて、普通に使っていると明らかにカンリリカとカーナが強い、という結論に至る。
 特に、固有技のスタン値がめちゃめちゃ高く、ボスまで難なく気絶させるカンリリカの強さはバランス崩壊に近いレベル。打撃属性で重そうなメイスを持つが攻撃のスピードも速く全キャラ唯一の6連撃が可能、同じ打撃属性だが出が遅くて3連撃のデュレンと明らかな差がついている。
 前作でもアーシャがかなり強かった遠距離攻撃タイプのキャラとしては今作はカーナがいるが、今回もかなり強い。そもそもの移動速度が速い・攻撃の出が早い・一定の距離を保てるので特にボス戦で重宝。フリーダも広い攻撃範囲でかなり強いものの、範囲を必要とする場面がそれほど多くないのと出が遅いこともあってアドルよりは癖があるか。
 全体的に、アドルを除いてとにかく女性キャラの強さが際立つ。ここまで来ると優遇と言って差し支えないだろう。

●ストーリー
 登場人物の名前やキャスナンの街などの舞台の一部が同じなだけで、もはや今までのイースIVとは全くの別物。これを正式なIVとするなら今までは何だったのかと言いたくなるくらい大きく変貌している。
 良くも悪くもサクサクと進む展開はイースシリーズの昔からの特徴で今作もそこからぶれてはいないのだが、リーザがいろいろやらかしたのに何事もなかったようにあっさり次へ進んでみたり、バミー・ガディスはほぼ2回しか登場がなく、それぞれカーナとオズマの因縁も見せられるが登場が少なすぎていまいち入ってこない…など、あっさりしすぎな場面もそこかしこに見られる。

●音楽・グラフィック
 キャスナンの街を出て最初に流れる「燃ゆる剣」のアレンジがいきなりテンション上がる素晴らしい曲で、これが良すぎたせいもあるのか、IVと言えばこれという名曲「セルセタの樹海」がかなり印象薄くなってしまった感がある。イースVIIの最初のフィールド曲「MOTHER EARTH ALTAGO」もそうだったが、やっぱり街を出た最初でテンションを上げてくれるのは大事だなと。
 「セルセタの樹海」の場合、正直言ってPCエンジン版…もっと言うとPERFECT COLLECTION版が相当良かったのも一因かもしれない。今回のもいいと思うけど。

 「一陣の風」(ギドナの大穴)、「地下遺跡」(古の地下遺跡)、「神代の地」(コロニア古戦場)、「失われし仮面を求めて」(トルメス湖上遺跡)など全体的に疾走感のある曲が多く、操作の軽やかさと本当に良くマッチする。

 グラフィックは当然ながらPSPのVIIと比べて大きく向上したが、全体的にぼやけた感も出ていて高画質感が薄れている気も。

●地図コンプリートの仕様が微妙
 ”セルセタの樹海を歩き回って地図を埋める”というのも今回のミッションの一つになっていて、到達率100%をかなりのプレイヤーが目指すことになるかと思うが、判定が結構シビアで、しっかりマップの縁を歩いて行かないと0.1%単位で見落としが発生する。
 最終盤でもう埋まったかな!と思ってたら1%未満の埋まらない箇所が出ると心が折れてくる。到達率に反映されているかがマップ上でものすごく判別しにくいのも難あり。

●総評
 イースらしい軽やかな操作感とテンポの良さでサクサクと進めることのできる作品。難易度も選べるので幅広いプレイヤーに楽しめる。通常プレイしている分には難点はほとんどないので、Vitaプレイヤーならやっておいて損はないと思う。現状PS4で画質のもっと上がった”改”が出ているので、PS4ユーザーならそちらのほうが良さそうだけども。