[Data]
ハード:Playstation
メーカー:SCE
発売日:1998.
ジャンル:アドベンチャー
実勢価格:100~200円(中古価格)

評価:★★★☆

double_cast04

double_cast05

double_cast06

double_cast07

[Review] 2012.11.09

ダブルキャスト

double_cast01 double_cast02 double_cast03

 全編アニメーションを特徴とした、選択分岐型アドベンチャーゲームシリーズ「やるドラ」の第1作。PSでは4作登場したが、4作ともに舞台となる季節が定まっており、この作品では「夏」が舞台となる。
 キャラクターデザインはあかほりさとる作品「爆れつハンター」「エルフを狩るモノたち」や「機動戦艦ナデシコ」などのTVアニメ版キャラクターデザインを担当した後藤圭二氏。ほぼ全編で繰り広げられるアニメーションの製作はProduction I.G.が担当(PS2を含めた全てのやるドラ作品を担当している)。
 次世代機の初期はとにかくアドベンチャーゲームが多く(有名どころだとMYSTとか、移植作品だがポリスノーツとか…)、それも1枚絵+たまにアニメーション&ボイスという感じのものが多かったので、このフルアニメーション+フルボイスという思い切った作り方はさすがハードデベロッパーだなあとか思ったものだが。当時のSCEは”自社ソフトで自社ハードの力を見せ付ける”というのがうまかった。”光と音のRPG”「アーク・ザ・ラッド」や、ムービーてんこもりの「フィロソマ」あたりもいい例なのではないだろうか(内容は賛否あるだろうけど)。

 以下あらすじ(Wikipediaより)。
 大学の映画研究部に所属したばかりの主人公は、ある夏の夜、赤坂美月という少女と出会う。何故か自分の名前以外の記憶を全て無くしていた彼女は、それが甦るまで主人公と同居することに。やがて、映研では自主制作の映画のヒロインとして美月を誘うことになった。しかし、その映画のシナリオ『かこひめの寝屋』は、かつて映研が撮影中に死者が出たことで何年もの間封印されていたという、曰く付きのものだった…。

 おかしな出会いのラブコメか?というスタートから、一気にサスペンスホラーに話がシフトする展開は面白い。完結までの所要時間が約1時間ということもあり、展開としてはかなり急なところがあるのだが、30分アニメの前後編みたいなものだと思えばそれほど違和感はない。ストーリー全体で見ると駆け足にしろうまくまとめたかなと思うが、特にグッドエンド系は先が見えやすい展開に終始した印象も。突拍子のない展開が多いバッドエンドのほうがいろいろ考えさせられて面白かったり。
 初回から2回連続でバッドエンドになると3回目のプレイではグッドエンドにたどり着ける救済措置(Hマーク)があるが、むしろ最初のほうはバッドエンドに進んで何ぼ、というゲーム。グッドエンドにたどり着くと、次のプレイからは選択肢が増えて違ったエンディングが出現するという仕組みで、このへんはかまいたちの夜みたいなものだと個人的には解釈しているのだが。
 もちろん、この手のゲームにはよくあるパターンの横道エンディングもいくつか用意されている。バッドエンドでもいくつかあるが、完全なパラレルストーリーになるノーマルエンドが面白い。

 アニメーションそのものの出来もかなりのものだが、それ以上に凄いのが声優の演技面。赤坂美月役の平松晶子・篠原部長役の水谷優子・二村役の森久保祥太郎・佐久間役の置鮎龍太郎をはじめ、登場キャラクターは多くないものの、それぞれが名演技で盛り立ててくれる。特に、結果的に一人2役をこなすことになる平松さんの名演が凄まじく、男っぽい最初の性格から女の子っぽく変わっていき、そして狂気の部分まで完璧な仕事ぶり。声優の演技がここまで出来を左右するのかということがよくわかる。もちろんこのゲームではいい意味で。

 これだけムービーとボイスを押し込めた力技な作りをしているためにディスク1枚には収め切れず、やるドラシリーズは全てディスク2枚組での発売となった。最初はもちろんディスク1から始まり、ストーリーの後半部分でディスク2に入れ替える。そしてエンディングにたどり着くと、最初からプレイするのにまたディスク1に入れ替える。
 1回目のプレイはいい。問題は2周目からで、既読部分をスキップ出来るようになり1プレイにかかる時間が短くなってくる。すると、ディスク入れ替えの手間もだんだん短くなってくるということになる。まあ、これが思った以上に面倒で、もう少し腰を据えてプレイできたらなーと思うことが多かったのは確か。力技の弊害というべきか。PSP移植版では1枚にまとめられているので、今プレイするならPSP版のほうが楽だし画質も上がっているのでオススメ。
 もうひとつ、100%クリアを目指すのがちょっと遠すぎるかなあと。選択肢をしらみつぶしに当たらなければならず、どうやら攻略サイトなどの情報によると最低でも44周は必要とのこと。これも44周で選択肢を当たりきった場合だから、普通に何も見ないでプレイしていて100%を目指すのはかなりきつい。長くプレイさせようというのが変な方向に進んだかな?

 結局プレイヤーが出来ることは”最大3つの選択肢から1つを選ぶだけ”なので、ゲームとして考えたときにどうなの?と思うところではあるが、見せる部分の出来がここまで良ければ相殺というところだろう。
 100%を目指すためのルーチンをどう考えるかにもよるが、主要エンディングまでたどり着く(大筋をプレイする)という意味合いではとても面白い内容なのは間違いない。プレイして損はない作品。