[Data]
ハード:Playstation
メーカー:スクウェア
発売日:1998.03.29
ジャンル:RPG
実勢価格:100~200円(中古価格)

評価:★★★

パラサイト・イヴ

 ミトコンドリアの反乱を描いて当時大ヒットとなった、瀬名秀明のSFホラー小説「パラサイト・イヴ」を原作としたスクウェアのRPG作品。舞台を東京からニューヨーク・マンハッタンへと移し、登場人物も一新。小説の数年後を舞台に、ミトコンドリアとの新たな戦いが描かれるオリジナルストーリーとなっている。
 CGムービーを多用した演出メインの内容で、スクウェア自身「シネマティックRPG」と名付けている。この後スクウェアはPS・PS2においてムービー多用のゲームを多数発売していくことになるが、そのはしりとも言える作品になるだろうか。
  製作総指揮に坂口博信氏。キャラクターデザインは、当時のスクウェアゲーに欠かせない野村哲也氏、音楽は「フロントミッション」「ライブ・ア・ライブ」の下村陽子氏が担当した。

 ここまでのCGムービーを高いレベルで詰め込めたのは当時だとスクウェアかナムコくらいだろうと思うが、今見てもさほど破綻は感じないのはさすがの技術力(ハードそのものの性能問題はさておき)。FF7からわずか1年足らずでここまでになるのだから、すさまじい進化と言えるのではないだろうか。ストーリー進行はちょっとご都合主義というか、登場人物の物分かりが良すぎな感が…(ミトコンドリアの反乱なんて信じろというほうが無理な話のはずだが)。

 街中の移動画面のみポリゴン・建物内などは基本1枚絵のグラフィックとなっているが、全体的にグラフィックの水準は高く、特に1枚絵のグラフィックに関してはどこを取っても美しい。
 反面、どこを歩けるのかがわかりにくかったり、建物内のドアについてはあるかないかの判別に苦労するなど、難点もちらほら。全体の雰囲気もあって暗い色使いが多いのも影響しているんだろうが、せめてFF7インターナショナルみたいに出入り口にマークをつけたりは出来なかったものだろうか。
 歩行スピードがあまりに遅いのはまったくフォローできない部分。リアルを考えたとしても、いくらなんでも遅すぎる。

 戦闘…に入る前に、今作では武器となる銃のカスタマイズに特徴がある。主に「付加値」「追加効果」のカスタムとなり、付加値については攻撃力・射程・装弾数の数値にプラスの補正がつき、追加効果は”n連射”や”ステータス異常”などがプラスされる。「ツール」というアイテムを入手することで武器同士の合成のようなことが出来るようになり、付加値の移動or追加効果の1つ移動のどちらかを選んで銃を強くしていく。追加効果を装備可能なスロット数の増加も出来るなど、まずまず凝った内容。結局のところ、追加効果はFFおなじみの”アビリティ”とほぼ同一のものなので、新鮮味があるわけではないのだが。
 連射アビリティの効力がわかりにくいのはどうかなと思うところ。当然連射はたくさん出来たほうが強いと思いがちだが、連射数を増やすと1発あたりの攻撃力が下がってゆく仕組みになっている。4連射を超えてくると威力は2~3連射とほぼ変わらず、むしろ弾数を消費するだけ無駄。このシステムについて、ゲーム中に解説が一切ないというのもまた問題。

 戦闘については、FFシリーズでおなじみのATB(アクティブタイムバトル)形式に近いものだが、ゲージを溜めている間もキャラを動かすことが出来、射程内に敵を捕らえたところでコマンド入力→攻撃という形が取られている。敵からの攻撃もキャラを動かし避けることでダメージを0に出来るとあって、アクション性の強いシステムとなっている。
 とは言え、歩行スピードはフィールドと同じくめっぽう遅く、アクションに長けているかどうかと無関係に”遅すぎて”攻撃を喰らうことが多々あり、歩行スピードを上げるPE「ヘイスト」の有用性に気付けないと、特に後半のボスにはかなりの苦戦を強いられる。
 当たり判定がいまいち不明確(アングルが戦闘のたび違うのでなおさら)というのもあるが、なかなか面白いシステムだと思うのにうまく使いきれていないと言うか、一部の要素で台無しと言うか、な感じ。

 クリアまでは10時間必要か?というくらい短い。前述の通り、物分かりが良すぎる登場人物ばかりですんなり進みすぎてる感があるとは言え、とりあえず最初から敵ははっきりしており、その敵を倒すまでの一連のストーリーは完結を見ているので、極端に短いとは感じない。クリア後のお楽しみとして、2周目「EX Round」と隠しダンジョン「クライスラービル」も用意されており、そこまで含めて考えるとまずまずのボリュームと言えるだろう。
 そのクライスラービルについては、77階ある自動生成ダンジョン(自動生成されるのは70階まで)を淡々と登ってゆくというもので、低層階はまだしも高層階は無駄に広い。全ての階にアイテム部屋があり、ここでしか手に入らないアイテムが多数出てくるので、上り階段のみを目指して駆け抜けることもしにくいという絶妙な作りで、走りの遅さと相まって”プレイ時間の間延び感”が半端ない。

 システム部分をいろいろ考えていくと、名称は変われど目新しいものは少なく、新しい部分は意欲的だが欠点も多い。グラフィック・音楽を含めた全体の空気感は素晴らしいものがあり、良くも悪くも雰囲気ゲー。ダメな部分にどこまで耐え切れるか…というところだろうか。