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ハード:Playstation Portable
メーカー:日本ファルコム
発売日:2010.09.30
ジャンル:RPG
実勢価格:300~600円(中古価格)

評価:★★★★☆

英雄伝説 零の軌跡

●ストーリー
 ゼムリア大陸西部、クロスベル自治州──
 かつて帝国と共和国の狭間で熾烈な領土争いが繰り広げられたこの地は、 現在では大陸有数の貿易・金融都市として発展を遂げ、繁栄を謳歌していた。
 一方、帝国と共和国による圧力も目に見えぬ形で高まっており、 両大国の意向を受けた議員・役人たちが醜い政争と汚職を繰り広げる中、 裏社会ではマフィアや外国の犯罪組織が台頭し、抗争を始めようとしていた。

 そんな中、市民の信頼を失ったクロスベル警察に4人の若者が集められた。新米捜査官、ロイド・バニングス。クロスベル市長の孫娘、エリィ・マクダエル。若き《魔導杖》の使い手、ティオ・プラトー。女たらしな元警備隊員、ランディ・オルランド。およそ規格外な彼らは「特務支援課」という新部署に配属され、 厳しい現実に直面しながらも、力を合わせて立ち向かって行こうとする。

 ──これは《壁》を乗り越えようとする若者たちと、 大都市の光と闇に生きる人々の生き様を描いた物語である。

●概要
 日本ファルコムのRPGシリーズ、英雄伝説第3期”軌跡シリーズ”の1作で、空の軌跡3部作の続編として発売された。英雄伝説シリーズとしては7シリーズ目ということで「VII」の名がついており、今作はVIIの前編という扱い。空の軌跡シリーズと同じ世界設定を共有する作品だが、今作からは空の軌跡シリーズの舞台となっていた「リベール王国」から変わり、リベールから北東に位置する「クロスベル自治州」が舞台となる。
 英雄伝説シリーズとしては初めての「コンシューマ機の発売が先」という作品で、2018年現在最後のWindows版が発売されているシリーズ作品でもある。PCゲームから裾野を広げてきた同社だけに、PC版打ち切りというのはなかなか考えさせられるものがある。

●ストーリー
  リベールと同じく、西に「エレボニア帝国」・東に「カルバード共和国」という2大国に挟まれる立地であることに変わりはないが、国として成立しているリベールと違って国家主権がないという特性上、2大国の圧力を発端とした様々なしがらみが支配する「魔都」となっている。
 ロイド達が所属することとなるクロスベル警察はそんなしがらみの中で対処できることに限界が大きく、両大国とのかかわりがある犯罪組織の検挙もろくにできないという事態に、市民からも全く信頼されていない。ロイド達は、従来の組織から外れた新しい枠組みとして新設された「特務支援課」に所属しあらゆる支援依頼を解決していきながら、クロスベルだけでなく近隣諸国も巻き込んだ巨大な陰謀に立ち向かっていく。

 最初は各地の支援要請を解決していって信頼を少しづつ得ながら…からの進行が非常に上手く、陰謀が少しづつ明らかになって行く様が全く違和感なく進んでいく。さすがはストーリーRPGを名乗るだけはある。場面場面で切り替わるセリフ数も相変わらず非常に多く、街の人々1人1人に至るまで手抜きを感じさせない丁寧な作りだ。
 空の軌跡と比べるとスタートの重さが違うので、ちょっと難しいストーリーになっている節はある。当然、空の軌跡をプレイし終わっているプレイヤー向けの前提で作っているというところもあるんだろう。

 後半に向けての盛り上げ方がさすがこなれてるなあという感じで、途中にインターミッションや記念祭といった要素も織り込みながら、プレイヤーがクロスベルの世界に溶け込みやすいナチュラルな進め方をしてくれる。そこまで広い世界を旅する作品ではないだけに、それぞれの拠点を定期的に訪れるようなストーリー展開にしてあって、ここも印象がつきやすいのかなと。

 前作で言うところのサブイベント「クエスト」と同じように、今作でも「支援要請」という形で数々の依頼を達成させていくこととなる。遊撃士と同じく捜査官ランクというものが設定されており、以来の達成数や達成内容によってポイント(DP:Detective Point)がもらえ、ランクアップするとアイテムなどがもらえる。

●グラフィック・音楽
 空の軌跡からは順当に進化したというところだが、前作で出来ていた視点の切り替え(回転)は出来なくなった。魅せるという意味では視点が自動で切り替わるほうがいいのだが、一部の場所でシンボルエンカウントの敵配置と合わないところがあったのは惜しい。
 音楽も相変わらずの高水準。戦闘曲の豪華さももちろんだが、フィールド系やクロスベル警察署の音楽などなど、こればっかりはさすがとしか言いようがない。展開や背景が背景だから仕方ないのだが、空の軌跡シリーズに比べるとのどかな曲を聞ける機会がちょっと少なくなっているので、4種類ある街道の音楽がとても落ち着く。4種類とも非常に良い。んだけど、街道をショートカットできるバスが導入されたので、わざわざ歩きで向かわない限り聞く機会は少なくなった。テンポと両立できないので仕方ないんだけど。

●戦闘・クオーツ・クラフト等
 基本的なシステムは空の軌跡と同様。フィールドにいる敵シンボルに触れると戦闘に突入するシンボルエンカウントだが、今作からフィールドアクションが導入され、敵の後ろからアクションを当てて気絶させてからエンカウントすることにより、より優位な状態で戦闘を開始することが出来るようになった。
 各キャラが身に着ける戦術オーブメントとクオーツの仕様もほぼ変わっておらず、はめ込むクオーツの属性とそのラインによって使える導力魔法が異なる。

 各キャラの技「クラフト」については、チェインクラフトがなくなった代わりに、2名が100ずつのCPを消費することで発動できる「コンビネーションクラフト」が新しく加わった。全体的に範囲が広く攻撃力も高いものが多く、しかもSクラフトと違ってCP100以上は絶対に消費しないというコスパの良さで、Sクラフトの存在がかなり薄くなったことは間違いない。

 空の軌跡同様に難易度を選択できるので、とりあえずNORMALでプレイしておけばそこそこの難しさで楽しめるし、EASYでもっと楽に進めることも可能だ。NORMALでもそれなりに歯ごたえがあるので、基本NORMALで進めておけば間違いはないか。

●やりこみ要素・実績
 今作では「実績」(ゲーム内のトロフィーみたいなもの)という要素があり、この実績を集めることで周回プレイ時の引継ぎ要素が増えたり、ギャラリー要素の開放だったりという恩恵が得られる。ストーリー進行で自動取得になるものも一定数あるが、「クオーツをすべて集める」「支援依頼をすべてクリア」「全てのレシピを集める」「指定の本をすべて集める」などの収集・やりこみ要素も多い。
 レシピや本が特にそうだが、手に入れる場所だけでなくタイミングが決まっているものも多くて、ノーヒントですべて集めて実績を解放させるのは困難を極める。空の軌跡でも同じような収集があったが。

 支援要請についても、大半は支援課の端末に要請が来るのだが、一部要請の来ない隠しミッションが用意されており、これもタイミングがかなりシビア。要請の中には正しい推理をしたかどうかでもらえるポイントが違う要素もあるなど、ゲームを単純に進めるだけならいいが、完璧を目指そうと思うと相当苦労するという感じだ。最初から2周3周することを前提としたような作りと言えばいいか。それならそれでもう少し1周が短いほうがいいのではという気もするんだが。普通に1周40~50時間要する作品なので…

 写真を撮るクエストや料理を集めるなどの一部クエストでは支援の期限ぎりぎりまで待ったほうがいい結果が出るというものも。これも初見じゃなかなかわからん、というか、早くクリアできたほうがいいのではと錯覚してしまう。面白い要素ではあるんだけど、ちょっと意地悪な気もしなくもない。

●総評
 空の軌跡シリーズの完成度の高さはそのままに新しい展開が存分に楽しめる。空の軌跡シリーズをプレイしているのなら、このシリーズをプレイしない理由がないというくらい完成度は高い。非常に安くなっているので、この機会にぜひ。