ケムコのコマンド選択式アドベンチャー。「ケムコアドベンチャー3部作」の第2作。この作品もICOM Simulations社製のパソコンゲームの移植作品。 前作のディジャヴが実在したことをもとにした現代風のストーリーであるのに対し、今作では一転して剣と魔法が中心となる西洋ファンタジー風の世界を舞台とする。 ICOM社製のパソコン版での位置付けは第3作で、悪魔の招待状よりも後に発売されていたそうだ。
王家の血を引く勇者である主人公(名前はゲーム内でも明かされないため不明)が、 世界を闇に包もうとする魔王ワーロックを倒しにシャドウゲイトと呼ばれる城へ足を踏み入れる…という、ファンタジーRPGの王道を突き進むようなストーリーで物語は始まる。
コマンドや基本部分は前作も次回作も一緒なので割愛するが、今作だけの特徴となっているのが「たいまつ」で、 コマンド実行・画面移動などのアクションを起こすたびにたいまつの火が小さくなってゆき、火が消えるとどんな場所だろうが問答無用で死ぬ(おかしな話だが屋外だったとしても死ぬ)。 いろんなところで手に入るアイテムなので数が足りなくなることはまずないが、冒険らしい要素があるという面では3部作の中では異色のシステムと言えるかも。
このゲームの評価をある意味高くしているのは主人公の各種行動で、コマンドは何でも躊躇なく実行する・事をいちいち詳細にコメントする。 シリーズ通して重要なコマンドとなる、自分にアイテムを使ったりする「セルフ」コマンドでも、どんなアイテムを使っても何のためらいもなく実行。 結果として、剣や斧などの武器をセルフで使って自害しちゃったりとか、たいまつを自分に使って自分に火つけちゃったりとか。 窓に「いどう」すると飛び降りちゃったりもあったかな。井戸に移動すると飛び降りるのもあったな。「いどう」もいろんなところに進んでは死んでくれる。
シャドウゲイト城の中も理不尽な場所が多く、本を調べたら落とし穴に引っかかって死亡とか、移動しただけではしごが途中でなくなって頭を打って死亡してみたり、 鏡を割ったら宇宙空間に吸い込まれて息が出来ずに死亡してみたりとか、どれだけバリエーション豊富なのかと思うくらいとにかくいろんな死に方をする。 それに関しての主人公のコメントというか断末魔の叫びというか…も面白くて。シリーズ通しての特徴として”死んでも直前からやり直せる”という優しいシステムがあるので、 死んで覚えるゲームとしては、死ぬときのコメントが面白いなんてのは最高の演出なのかもしれないなぁ…。
パソコンで出たときにこんなコメントばかりの勇者だったとは思えないので、ファミコンに移植した際にかなり脚色を加えたんだろうな。 でもこの主人公がいなかったら、このシリーズのファンは確実にほとんどいなかっただろう。製作者の意図通りの流行り方をしたかは別として、 こういう主人公を作ってくれた人には大感謝ですね。
まあ、死ぬバリエーションが多い=死ぬ機会が多い なので、繰り返しプレイも要求される。すんなり進めたい人には向かないゲームだろう。 最終的にはこのあまりの理不尽さを笑えるかどうかだ。一回はまると止まらない魅力はあるゲーム。 このゲームにとりつかれると、間違いなく死にそうな場所に突撃するのが当たり前になるもんな。
あと、呪文のネーミングセンスの悪さはなんなんだろう。プーロにレナニゼカ、ミチヨヒラケとかさぁ…。移植前はどういう呪文だったのか知りたいよ。