ワールドスタジアム2
PSのナムコ野球ゲーム「ワースタ」シリーズ第2弾。野球ゲームと言えば毎年データが変わるため、シリーズ化される作品に関してはほぼ毎年1回出るというのが通例だが、このワースタシリーズに関しては、前作「EX」からこの「2」まで、実に1年9ヶ月を要している。
Wikipediaにも同じネタが載っているので今さらな説明にはなるが、1997年のナムコはNINTENDO64向けに「ファミスタ64」を作っていた。ファミスタの歴史を紐解いてみると、1993年12月のFC版最終作「ファミスタ'94」以来、「据え置きハードに出すファミスタシリーズは年1作のみ」というルールめいたものがあったようだ。この流れに反した年は、「スーパーファミスタ5」と「ワースタEX」が2作かぶった1996年のみ(熱チュー系も入れるのであれば、PS2版とGC版が出た2003年も該当するが)。
そんなわけで、前作「EX」から約2年後の新作となったワースタ2だが、98年の最新データを搭載し、前作の良い所はそのまま残し、というまっとうな続編となっている。
グラフィックは前作でほぼ完成されている部分であり、球場のフルポリゴンやホームラン・ファインプレー時の各種演出は従来どおりのものがそのまま使われている。
変わったのは選手グラフィック。前回は投球・打撃画面の選手は全て2Dで描かれていたが、今作以降は選手もフルポリゴンとなった。作りやすくなったからかはわからないが、今作からは選手の動きに似せて作られるようになり、野手では松井、投手だと星野伸や佐々木・三浦などのフォームが再現されている。
投球・打撃については、前作「EX」のレビューでも書いた通り、いつものファミスタシリーズと同じシステムに戻った。投球は投げてから左右キーで調整、バッティングは完全にタイミングのみで左右に打ち分け。ミートスイングとパワースイング、2種類のスイングについてはそのまま残ったが、タイミングが異なるわけではなく、ミートポイントを調整するという形が取られた。
2種類のスイング以外は昔からある単純なシステムだが、単純ながらも自分の感覚ですぐに左右に打ち分けられるようになるこのバランス感覚の良さはさすがとしか言いようがない。このシステムをうまく生かせない会社がごまんとあると思うと、ナムコの凄さがよくわかる。
ゲームメニューのほうでは、新しいモードが追加。一番大きいものは「戦国!国盗リーグ」というもので、12球団からひとつを選び、それぞれの球団が持つ領地を占領していくというシミュレーションっぽい要素を若干加えたモードとなっている。球団ごとに本拠地の城と3つの領地を持ち、隣の領地に攻め込んでいく。
場所によっては探索すると戦国武将をモチーフとした選手が発掘でき、既存の選手と入れ替えて使うことも出来る(選手自ら面会に来るケースもある)。他球団を滅亡させると、1人選手を引き抜くことも出来る。
面白い発想のモードではあるのだが、通常のままプレイすると1回1回の戦いで9回フルイニング戦わなくちゃならんっていうのが問題あり。オプションでイニング数の変更が効くので、1~3回くらいにしないとすぐだれると思う。
他球団からの引き抜きも出来る上、最終的にクリア後のチームを保存してオープン戦やリーグ戦などで使うことも出来るとあって、ある意味エディットの意味合いも兼ねているモードのように思うのだが、引き抜きに至る手順がさすがに長すぎてエディットの体はなしていない。
次に「作曲くん」。そのまんまだが、選手の応援歌を自作できるモード。こちらは普通に作れますよって事で特筆すべきこともないのだが、サンプル曲がえらい豊富なので、まずサンプル曲をいろいろ聴いてみてほしい。
もうひとつ、任意の6球団を選んでリーグ戦を行う「リーグ戦」モードも新たに追加されている。まあ、これについてはナムコスターズや上記の国盗リーグ終了チームをリーグに組み込みたい場合にのみ使うモードだと思う。
ワースタらしい部分はそのまま、ファミスタライクの操作系になったことで初心者プレイヤーには間違いなく敷居が低くなった。ファミスタらしくなったわけだが、前作の野心的な内容もとても良く、1作で終わらせるのは勿体ない内容だった。何とか存続の道を模索して欲しかったと思う。
最初のほうで「ファミスタシリーズは年1作」と書いたが、このことを踏まえて、「なぜEXの操作系が2以降採用されなかったのか」という部分は何となく読めてくる。
ワースタEXの公式サイトを見てみよう。(→こちら)
→「ファミスタシリーズとは一味違う!」
→「ファミスタ」とは枝分かれした独自の路線を進んで行くソフト『ワースタEX』
…つまり、ワースタはファミスタの系譜で作られたものではなかったと。あくまで派生した別ゲームだったというわけね。だから、96年は本家「スーパーファミスタ5」と別枠「ワースタEX」の2本が出ているわけだ。
97年も、本家は「ファミスタ64」が出た。ただ、このあたりからPS陣営の強さが際立ち始めていたので、この時点でワースタシリーズの別枠から本家への移動を考えていたんじゃないか。97年にワースタ2が出なかったのもこのあたりの理由ではないかと思う。97年年末商戦あたりでPS陣営の勝利が明確になり、98年に入って満を持して本家ファミスタシリーズとして「ワースタ2」を出したと。本家に戻すからには、EXのような特殊な操作系は使えない。ということで元に戻ったのではないだろうか。
まあ、何にしても、全体的なバランスは良く、ナムコの持っている野球ゲームの資産をうまく生かした内容にはなっていると思う。今プレイするのにわざわざ2である必要はないに等しいが。