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ハード:Playstation 2
メーカー:スクウェア・エニックス/ラクジン
発売日:2003.12.25
ジャンル:アクションRPG・3D
実勢価格:350~800円(中古価格)

評価:★★★★

鋼の錬金術師 翔べない天使

●概要
 2011年まで連載されていた月刊少年ガンガンの人気漫画「鋼の錬金術師」のアクションRPGで、同作からは初のゲーム化。リゼンブールで機械鎧を修復してもらってからセントラルへ向かう途中を舞台としたオリジナルストーリーだが、基本設定は同時期に作られていたアニメ版を元にしているようだ。
 制作は「幻影闘技」・「ファイナルファンタジーエクスプローラーズ」などのラクジン。合計30分近くにもなるアニメーションはテレビ版と同じボンズが手掛けており、オープニングムービーではアニメ版1stエンディング「消せない罪」が流れる。アニメ部分と一部イベント部分はボイスつき。

●基本操作
 背面固定の俯瞰視点というごくごく一般的な3Dアクション+経験値によるレベルアップ要素とレベルアップによるボーナスポイント(キャラクター強化)要素・装備品によるカスタマイズによるRPG要素といった形で、目新しいものは特にないが誰でもすんなり入っていける作りとなっている。
 操作は□による通常攻撃と×のジャンプが基本。○は錬金攻撃ボタンで、ステージ上のいろいろなものから武器や大砲などを練成することが出来るほか、何もないところでは壁を作ったり錬金術での攻撃が出来る。△は練成したものを拾ったり、大砲に乗ったりする「装備/解除」ボタン。R2が緊急回避ボタンとなっている。
 △はアルへの命令ボタンで、自分から離れているときに押すとアルを近くに呼ぶ「CALL」・近くにいるときに押すと敵に攻撃する「TACKLE」が発動する。
 右スティックで視点変更・L1でカメラリセット。L2でマップ切り替え(拡大→縮小→OFF)。使うボタンは多いが、基本必要と思われる操作はすべて詰め込んだ印象。

 ○ボタンの錬金攻撃についてだが、ステージ上に置いてある箱や木・柱など様々なものが練成の対象となっていて、置いてあるものによって最大2種類の練成が出来る。戦車のような移動大砲があったり偽エド(代わりに攻撃対象になってくれる)・牛などバリエーションもなかなか豊富で楽しめる。偽エドや牛など一部練成物については、発動後回復薬に再練成もできる徹底ぶり。
 エドに武器を装備させると錬金術とのコンボも出来るようになったり、練成した武器に対してさらに練成する(属性を付加させる)こともできる。属性は雷の強さが際立っていた(しびれ効果あり)。

 全体通して、レスポンスは良くサクサク動かせる。走るスピードがもう少し早いと良かったかなというところと、通常視点が低めで前方の距離を把握しにくく、足場を飛び移るような場面で困ることがあった。

●難易度
 マップ切り替えのたびに敵が再出現するのでレベル上げもしやすく、練成物→回復薬練成を繰り返せば回復の心配も消える。受けるダメージは普通に進めていればそれほど大きくなく、回復アイテムでごり押しできるところがほとんどなので、一部ボス戦を除くと簡単とまではいかないがまずまずの難易度といったところだろう。
 空戦・水戦キメラのような大砲・弓などの練成物で狙い打ちが必要なボスが慣れないとかなりの時間を要するほか、陸水空3キメラ同時対戦、いくらなんでもあれはないだろう。それぞれ攻撃できるタイミングが決まっていて待機時間が長く、難しいのもあるが単純にイライラさせられた。あと3兄弟+リビングアーマー5体も若干理不尽に感じるレベル。

●2周目
 1周が大体10~15時間ほどと短いが、2周目になると「マテリアル」というアイテム収集要素が加わる。映像マテリアルと画像マテリアルとで分かれていて、手に入れたマテリアルはタイトルの「ギャラリーモード」で閲覧できる仕組み。映像マテリアルはゲーム中のアニメ映像をまとめて見られるだけだが、画像マテリアルは原作者荒川弘氏のキャラクター原案イラストなどが見られる。

 惜しいのは、マテリアルが入っている宝箱が全体的にいやらしい(隅っこで見難い)場所にあるということ。宝箱自体元から小さく見つけにくい存在であることもあるが。しかもゲームの進行上ほとんどのマップに後から戻れないので、1回取り逃すとそのままになってしまう。何か救済措置が欲しかったところだ。

●アルの動き
 アルはAIによって自動で動き敵に攻撃したりするのだが、目の前に敵がいても突っ立ってたりするなど安定せず、どちらかというと敵の攻撃を分散させる盾のような役割になってしまっている(まあそれはそれでいいんだけど)。
 △ボタンで近くに呼ぼうとすると、段差関係なくまっすぐ来ようとするのでずっと壁に走ってたりするし(一定以上離れるとワープするように近くに来るようになるが)、もうちょっと何とかならなかったのか、という感じはする。

●ストーリー
 ストーリーは、良くも悪くもシリアスの中にちょっとしたおちゃらけ要素を組み込んだハガレンらしい感じで、最後の展開もらしいなというところ。登場する原作メインキャラはエルリック兄弟を除くとロイ・リザ・アームストロングのみと非常に少ないが、違和感はほとんど感じない。端々に入るアニメーションも高いクォリティで長すぎずカットも可能と進行上のストレスも少ない。

●総評
 キャラゲーと片付けられがちなアニメ・マンガ原作作品の中ではかなり頑張っている内容。題材からしてゲームにしやすいところもあるんだろうが、錬金術に関しては広げると何でも出来てしまうので収拾が難しく、今回の使い方は上手い落とし所だったかなと感じる。