[Data]
ハード:Playstation Portable
メーカー:SCE/クライマックス
発売日:2005.07.21
ジャンル:アクションRPG
実勢価格:400~700円(中古価格)

評価:★★★

[Review]2016.02.06

天地の門

●あらすじ
 東西南北と中央の島に武芸者集団「武門」が存在し、それぞれの門から流れる「気」によって繁栄を得ていた大陸、「央卦」。5つの武門はそれぞれの地域を統治し、長い間平和が保たれてきた。しかし、突然中央を統治していた武門「中央麒麟門」が各武門に侵攻を開始。東にある「東方青龍門」が門弟一人を残し全滅するという惨劇が起こる。
惨劇から辛うじて逃げ延びた門弟スイリンから事情を聴いた元門弟のシンブは、スイリンを新門主とする東方青龍門の再興に向けて一部芸者として協力することを決意し、スイリンとともに旅立つことを決意する…

●概要・基本操作
 メガドライブ「シャイニング&ザ・ダクネス」「シャイニングフォース」を手掛けたクライマックス社(2014年に業務終了?)が制作を担当した、PSPオリジナルのアクションRPG作品。木・火・土・金・水のいわゆる「五行」を基本とした中国風の世界観が大きな特徴となっている。

 場面によって変動はあるが、全体を通してほぼ真横に近い視点で進むアクションRPGで、×ボタンでの通常攻撃と□で発動する気功術(攻撃魔法のような扱い・□長押しでゲージを溜めて使用する)・○で敵に剣を投げる飛剣術、という3つの攻撃で戦う。△はアイテム使用(Lボタンで装備アイテムの切り替え)。ジャンプはない。気功術は使用回数によってのレベルアップがあり、レベルが上がるごとに溜めるゲージが長くなるが威力・攻撃範囲が大きく増加する。
 飛剣術で相手に剣が刺さっている状態で気功術を発動すると、刺さっている相手にピンポイントに強力な気功術が当たるという攻撃もある。一部ボスではこれが使えないと倒せない。

 五行思想にはそれぞれ「相生」と「相剋」といういわゆる強弱のような関係性が存在するが、今作でも相生は時計回りに五行を組み合わせることで威力が上がってゆく仕組みとして、相剋は一般的なRPGの属性強弱のようなものとしてゲーム中に生かされている。
 相生のもう一つの要素として「蓄積」というのがあり、1つの五行属性攻撃を連続で繋いだ後に相生の剣譜を繋げると、最後の攻撃だけ威力が格段に上昇する。

●武芸録
 
今作最大の特徴が、武門それぞれの剣術を組み合わせてコンボを作ることが出来る「武芸録」というもの。一つの武門に30の剣術が存在し、その剣術を記した竹簡「剣譜」を手に入れることで武芸録に登録できるようになる。武芸録がコンボで、剣譜が技というところか。
 武芸録・剣譜ともにアイテムのような扱いとなっており、武芸録はストーリー上や宝箱の中などから、剣譜は同じくストーリー上などのほか、倒した敵からのドロップアイテムとしても手に入る。
 武芸録は6つまで装備することができ、Rボタンでいつでも切り替えることが可能。五行に乗っ取った属性強弱があるので、様々な武芸録を装備しておいて相手の属性によって切り替えて進むというのが進め方の基本となってくる。(ザコ敵を含めすべての敵に五行属性があり、着ている服の色で大体判別できるようになっている)

 パッケージ裏にもでかでかと「自分だけの連続技を作り出せ!」とあるように、この武芸録を使って武門を問わず様々なオリジナルコンボを作ることが出来る、というのが本作最大のウリになっていたが、オリジナルコンボを作るには「自由録」を入手する必要があり、5つあるうちストーリー上で手に入るのが1つだけ(入手はそれほど難しくはないが)。
それ以外については、道中様々な場所で入手する武芸録を入手し剣譜を入れ込んで使うのだが、こちらは入れられる剣譜が種類も順番も決まっている。構成する剣譜をすべて持っていないとほぼ無意味なため、武芸録だけ増えていくが剣譜が足りないということが特に後半は多々起こる。

 自由録の組み立ては非常に面白く、(繋がるかどうかは置いといて)どんな技でも組み合わせられるというのが斬新。自由録を使っていくとレベルアップしてコンボ数(入れ込める剣譜数)が増えていくが、増えていくまではコンボ数が少なくて非常にかったるく、ここがもったいないものの、増えてからの自由度・相生や蓄積を覚えてからがとにかく楽しい。
 気になったのは、相生・蓄積の効力があまりに強すぎ、既存の武芸録が途中からほとんど意味をなさなくなること。というより、既存の武芸録が弱すぎるといったほうが正しいだろうか。後半のボスになると、1000以上のHPがある相手に対して通常攻撃で1コンボ1ダメージになることもザラにあり、自由録がうまく使えていないと気功術頼みになってしまう。しかもダメージ50とか。

●視点
 上記の通り、ほぼ真横に近い視点か少し上からの視点でプレイする。ラジアータ ストーリーズがこれに近い視点。全体的にキャラが大きく見えることから、画面の小さい携帯機だからこその視点ということになるだろう。
 予想されていたことだとは思うのだが、手前奥がいまいちわかりにくくて攻撃判定に戸惑う。様々な剣譜がある中で当然攻撃範囲にも差が付いているが、視点の微妙さとロックオン的なものがない(方向キーでの手動合わせのみ)という仕様のため、攻撃範囲の低いものや合わせにくい技はどれだけ攻撃力が高くても使えないというのがちょっと惜しく感じる。

●メニュー
 せっかくアイテムを装備して使うというシステムがあるのにメニューがいつでも出せて戦況をストップ出来るうえ、そこからアイテムを使えてしまうおかげでわざわざ隙のあるモーションをかけてまでアイテムを使用する意味がない(もちろん面倒じゃないという部分はあるが)。
 他、アイテムについては、ソートが出来るともっと良かったなあと思う。

●防御・回避
 防御・回避が×長押し・かつ相手の攻撃を食らったあとじゃないと発動しないというのが気になった。連続攻撃に関しては攻撃を途中で止めるという役割になるからまだいいが、遠距離攻撃をしかけてくる敵相手だと単攻撃の連続でガードが発動せず、遠距離から3人くらいにチクチク狙い打たれながらその隙に近距離連続攻撃を食らうという理不尽なボコられ方をすることもある。
 大きめの敵になると一撃でHP半分以上持っていかれるなどもあり(2周目に至ってはほぼ一撃死)、攻撃が来るとなったときの回避策が何もないというのはいささか辛いところだった。
 基本4ボタンを何かしら使ってしまっているので仕方がない気もするのだが、ガードはしっかり専用ボタンをつけて即発動にしたほうが良かったのではないかなあと…

●その他
 ストーリーがそれほど目立った感じでなく先も予測しやすい、とそんなにインパクトのあるものではなかったが、キャラについては味方・敵ともに立っていて良かった。声優も結構豪華だしイベントは基本フルボイスだし。
  ロードはちょっと長くて量も多かった感じ。コンティニュー後の再開やマップ移動・演出の合間合間など、NOW LOADING…の文字が目立ってしまったのはもったいなかった。

 道中一本道でサクサク進めるところは良かった。一本道すぎて寄り道要素がほとんどないのは確かだが、その中でもフィールドギミックによる隠し要素やフラグで開く扉や宝箱など何とか最低限は入っているので、アクション重視ならこんなもんだろうという感じも。

●総評
 ジャンプなしでちょっと前時代的ではあるが、まずまず楽しめる。クリア後には2周目もあるが、強くなった敵を切って剣譜を集めるくらいしかやることがないので、実質1周楽しめればそれでほぼ終わりというところをどう見るか。1周クリアはだいたい15時間程度。