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ハード:Playstation 2
メーカー:セガ/ネクスエンタテインメント
発売日:2007.05.17
ジャンル:アクションRPG
実勢価格:250~500円(中古価格)

評価:★★

シャイニング・ウィンド

●プロローグ
 「想い」が結晶化する世界『エンディアス』。その中のリーベリア地方が物語の舞台。
 リーベリア地方は「人間の国」と「エルフの国」そして「獣人の国」の三つの国家が安定した治世を送っていた。しかし「カオスゲート」と呼ばれる次元の裂け目が各地で口を開き、混沌のエネルギーが流れ込み大地が汚染され始めた。
 闇の魔物が出現して混迷を極める中、謎の帝国の影が動き始めていた。

 時を同じくして、カオスゲートを閉じることが出来る「心剣(ソウルブレイド)」を操る能力を持つ「心剣士(ソウルブレイダー)」と呼ばれる異界の戦士がこの世界に降臨した。彼らは救世主なのか?それとも……。

 リーベリア全土を覆う、心剣をめぐる動乱の時代が今、幕を開ける。

●概要
 セガの人気シミュレーション「シャイニング・フォース」シリーズの流れを受け継ぐアクションRPG。「シャイニング・ティアーズ」「シャイニング・フォース ネオ」「シャイニング・フォース イクサ」に続く第4弾となり、制作はティアーズと同じネクスエンタテイメント(2005年にネクステックから社名変更)。キャラデザはティアーズから引き続きTony氏。
 ティアーズのシステムを引き継いで改良した作品で、多数の仲間からパートナーを選択する出撃システムや本陣でのインターミッション・ミニマップによる国と国との闘いを描くストーリーなど、かなりの要素をティアーズから引っ張ってきている。
 新しい要素としては、パートナーとの絆を深める専用のサウンドノベルイベント「心の扉」やステータス上昇をカスタマイズする「ソウルマトリクス」などがある。

●ストーリー・声
 ティアーズと同じくインターミッションでミニマップを使って語られるものが多く、国と国との戦争のはずなのに規模感をいまいち認識できない。とは言え、前作よりも町住民のセリフ量は増えており、緊迫感は薄いにせよ進歩が見られるところ。
 拠点の間にフィールドが出来てそこを歩いて移動することも出来るようになり、やっとそれなりに世界の広さを実感できるようになったのも改善点だろう。まあこれについても、謎に迷路みたいな地形になってて無駄に時間をかけるような作りにしているのは疑問だけど…

 主人公キリヤと幼馴染のシーナ・クレハ・ソウマ・トライハルトら「元の世界での同学年」との強い関係性がキーポイントになるストーリーなんだけど、元の世界での結びつきがゲーム中で全く分からないまま進むので、こちらが思っているよりゲーム内部の進行が早くて置いてけぼりを食らっている感が強かった。あとクレハのヒロイン属性強すぎてシーナ大丈夫?って感じ。

 シャイニングシリーズは毎度声優陣が豪華だが、今回も主人公キリヤが石田彰さん、幼馴染のシーナが水樹奈々さん。ほか斎藤千和さん・川澄綾子さん・白石涼子さん・保志総一朗さん・堀江由衣さん・桑島法子さん・中井和哉さん・神谷浩史さん・置鮎龍太郎さん・緑川光さん・草尾毅さん…とどう集めたんだというくらいの豪華メンツを揃えた。演技については言わずもがなとても質が高く、やっぱり声優をちゃんと使えばこうなるんだな!というね。

●基本操作・技
 □の”通常攻撃”と△の”特別な攻撃”を組み合わせてのコンボ形式になり、△/□→△/□→□→△/□→□→□→△ と4種類のコンボによって出る技が変わるようになった。前作では技を使うのに「SP」というポイントを消費する形だったものも廃止されたので、ティアーズと比べると技を乱発することが出来るようになり、このあたりは単純に動かす楽しさが増えた部分。
 パートナーと2人協力で出せる「リンク技」も前作から引き続き登場。攻撃範囲や威力がだいぶ見直されたようで、なくても全く支障がなかったティアーズからは大きく進歩し、あると便利な技がかなり増えている。クレハあたりは範囲指定に慣れると相当強い。あとはオートスキルで自動回復してくれるクララクランとか、設置型で一網打尽にできるホウメイもなかなか。

 前作ティアーズ同様、自キャラを動かす以外に右スティックで同時に出撃したパートナーキャラを動かすこともできるが、相変わらず緊急回避以外に使い道を見出せないのが残念。

●レベルアップ・能力上昇・スキルレベル
 ここもティアーズから引き続きの要素になるが、レベルアップ時にはボーナスポイントが3ポイントもらえ、そのポイントを筋力・器用・知力・体力の4パラメータに自由に振り分けることが出来る仕組み。スキルはレベルアップにつき1ポイントもらえ、こちらはスキルに振り分けることで技のレベルアップが行える。
 装備する武器防具に「ステータス制限」がついているのもティアーズ同様だが、「ステータス縛りがかなり緩くなった」ことと「購入時や装備時にパラメータ不足値が表示されるようになった」、この2点のおかげで大分使いやすいシステムに変わっている。

 仲間になるキャラクター全員に同じ作業をしなければならないのは変わっておらず、終盤になると最大10人にちまちまレベルアップ・スキルアップのステ振りを行う必要がある。正直ちょっと面倒。

●ソウルマトリクス・ソウルピース
 今回の新要素の一つで、「文字ソウルピース」と呼ばれる漢字一文字が埋め込まれたピースを配置して能力アップや自動発動するオートスキルの習得などが行えるシステム。漢字を組み合わせて熟語にするとさらに能力アップが出来る。例えば「聖」と「剣」を同じ列に並べると「聖剣」となり命中率アップ補正が付く、みたいな感じ。
 単にピースをはめ込むだけではなくて熟語を考えながら配置していくというのは他のゲームにはなかった要素。こちらが思っていた熟語が全部入っているわけではないので、入れてみたけど何も起こらなかったりするのはしょうがないところか。

 はめ込む「文字ソウルピース」については、落ちていたりカオスゲートを閉じたりすることで手に入るほか、モンスターを倒すことで手に入る「モンスターソウルピース」を合成することでも手に入れることが出来る。
 モンスターソウルピースからの合成は3つ→文字ピース1つになる形だが、大半ランダム生成になっていて欲しい文字を手に入れるのが困難。一部確定文字ピースが出る組み合わせもあるが、ゲーム中ではほとんど教えてもらえないので自分で探す必要があり、モンスターピースだけで230種類もあるので組み合わせを探すだけで心が折れる。
 攻略を見ても「気に入らない結果ならリセット」と書かれるようなレベルで、これだけの素材数があるのにランダム生成を混ぜてくるのが本当に理解に苦しむ。せめて「精製後にどんな文字が出てくるか事前に見られる」くらいはやっても良かったのではないかな。

●心の扉システム
 パートナーの心の中に入り込んで絆を深める専用イベント。パートナー1人につき5段階あり、特定の「文字ソウルピース」をはめ込むことで先へ進むことが出来る。内容はすべてサウンドノベル形式で、途中に必ず二択の選択肢が入る。この選択次第で絆値が上昇、絆値が上昇しレベルアップすると心剣がパワーアップし、能力等に補正がかかるという仕組みだ。
 各キャラクター専用のソウルピースは都度キャラとの会話で手に入るのでいいとして、それ以外に必要な汎用文字ソウルピースは確定で手に入る方法が少なく、手持ちになかった時にとても苦労する羽目になる。ここでもランダム生成のデメリットが。

 このイベント見るための「霊樹」は拠点のすぐ外にあるんだが、パートナーキャラを選択して出陣しないと拠点の外に出られないので、イベントを見るためだけに何度も拠点に戻って出陣しなおさなくてはならない。拠点の敷地内に置くんじゃだめだったのかな…

●カオスゲートの不安定な難易度
 フィールド内にはカオスゲートと呼ばれる空間が複数漂っている。中にはモンスターが生息していて、ボスモンスターを倒すとカオスゲートが消滅。一定数片づけるとボスゲートが登場、中のボスを倒すことでフィールドが浄化され、浄化されたフィールドには「霊樹」が設置されてその地点へワープできるようになる。
 このカオスゲート内の敵が突然強くなったり突然即死に近い攻撃を出してきたりとかなり不安定で、終盤になると通常攻撃20ダメージくらいのボスがいきなり300ダメージを叩き出して来たりする。(ちなみにこの時点での最大HPは300~350程度)
 それと、カオスゲートで戦うときは「守護天使」と呼ばれる移動しない像が設置されるのだが、この守護天使にもHPが設定されていて、守護天使のHPが0になっても敗北になってしまう。終盤は自分がやられるよりも先に守護天使がやられるパターンが頻発し、最初の配置次第では何もできずに敗戦までありうる。自分の腕がどうこうにすらならないのは正直言ってイライラ。

 逆にカオスゲートを除いた部分はほとんどの戦闘でごり押しが可能なくらいの難易度で、どうにもバランスが取れていない。

●総評:ティアーズのブラッシュアップでは限界
 細かいところだとダメージ表記も見やすくなり、ロード時間も大分短くなった、全体を通してティアーズのダメだったところは概ね改善してきている。しかし、ティアーズのシステムをいくらブラッシュアップしたところでものすごく面白い作品にはならない、というのが結論として出てしまった感じがする。いろいろ追加したシステムもいい部分はあるけどデメリットもしっかりプラス、と全体の底上げにはさほど繋がっていないように思う。「前作よりはいい」程度、ちょっと厳しい作品。